スターサファイア-1-プレビュー



【1】









「オーディション!?俺が!?」
思わず講堂内で大声を上げてしまい、周囲の視線を集めた山本は我に返って気恥ずかしさに首を竦める。
居ずまいを正した山本の横に座っている、彼に大声を出させた本人はと言うと、悪びれる様子もなくにこにこ笑顔のまま書類を山本に差し出した。
【1次選考通過のお知らせ】と書かれたそれにはしっかりと【山本武殿】と明記されている。念の為三度内容を見返している山本は、彼にしては珍しく笑顔を取り繕うことも出来ずに口を半分開けたままだ。
「京子ちゃんとハルが見付けて来てさ。一次は書類選考だけだから、とりあえず出してみようかって」
「とりあえずって……」
ま、山本なら受かると思ってたけど。とさらりと言われて二の句が続けられなくなる。これは確信犯だろう。
先程から笑顔を崩さない小柄な青年は、沢田綱吉。山本とは中学時代からの親友で、高校、大学と同じ学校に通っている。中学時代はいじめられっ子だった彼だが、実は大手芸能プロダクションの初代会長の血縁で、大学を卒業したら次期社長として入社が決まっているらしい。
けれど、今回のオーディションは綱吉のコネとは違うようだ。一般公募されていた募集を友人の女子達がたまたま見付けたものだと綱吉は説明した。
「二次は面接だって。日時はそこに書いてあるけど……」
「いやあの、でも俺演技とかしたことないし、」
綱吉の言葉はすでに二次選考を受ける前提で進められていて、山本は慌てて話を遮る。突然オーディションなんて話題になって、あまりの驚きに反論するのを忘れていたが、山本は一度だって役者になりたいと思ったことはないし、今でこそ引退したが高校までは野球一筋で演劇をしたことなんてない。強いて演劇経験を挙げるならば幼稚園のお遊戯会くらいだろうか。
そんな山本が役者なんて無理だよ、と言おうとしたところで、綱吉からもう一枚チラシを渡された。【募集概要】と書かれたそこには、見たことのある俳優の顔写真が掲載されている。
「………?」
「言い忘れてたけど、今回のオーディションは七月から始まるドラマの準主役の選考なんだよね。ハヤト主演の」
「ハヤトのっ!?」
思わずまた大声を出してしまった山本に、周囲の視線が突き刺さった。


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