スターサファイア-extra-プレビュー
ピンポン、と突然部屋に響き渡ったインターフォンの音で覚醒する。
山本は開かない目をごしごしと擦りながら、ベッドを降りあまり広くはないリビング兼寝室をのろのろと横切って玄関を開けた。
「よ。」
扉を開けると、良く見知った顔が立っていた。
知り合ったのはついこの間なのに、ずっと昔から知り合いの様な気がしてしまうのは、たぶん彼のことをずっと見ていたからだろう。
……ブラウン管越しに、だが。
「えっ……、ちょ、ハヤト、じゃなかった獄寺!」
思わず声を上げてしまってから、山本は慌てて口を噤む。
目の前にいるのは売れっ子俳優の獄寺隼人だ。子役時代から注目されていたが、一時期モデルに転向し、つい昨年から再び役者として活動するようになった。年齢は山本と同じ十九歳。イタリア人とのクォーターで、日本人離れした容姿と、透き通るようなシルバーの髪はテレビや雑誌の中でも一際目立つ存在だ。若い女性を中心に、ファンからは『ハヤト』と呼ばれており、実は子役時代から大ファンだった山本も密かに彼をそう呼んでいたりするのだが、さすがに本人の前でそれは失礼だろうと人前では苗字で呼ぶようにしている。(敬称を付けないのは、初めの頃ハヤトに「『さん』付けられると気持ち悪ィ」と言われたからだ)
そんな有名人の彼がこんなところにいるなんてマンションの住人に気付かれでもしたら大変なことになるだろう。ただでさえ最近ドラマになんて出てしまっているお陰で周囲の視線が気になるのに、万が一騒ぎにでもなったら平穏で地味な大学生活はもう送れなくなってしまう。
もともとただの平凡な大学生だった山本は、ひょんなことからドラマのオーディションを受けることになってしまい、主演のハヤトに会いたい一心で臨んだオーディションにたまたま合格してしまった。夢にも見たことのなかった役者デビューを果たした山本だったが、実際このまま役者を続けていく気はあまりなかった。ハヤトを生で見れて、直接話が出来た。それだけで満足だったからだ。
今のドラマが終わったら普通の大学生に戻るつもりでいる山本としては、家賃も格安で学校から近いこのマンションを出て行くのは辛いところだ。誰も見ていませんように、と思いながら恐る恐るドアの外を伺っていると、その様子を見ていたハヤトが事も無げに言った。
「大丈夫だよ、この時間じゃまだ誰も起きてねぇだろ」
「……この時間?」
そういえば、改めて外を見ると空が薄明るい。
ベッドから起き上がった時に無意識に枕元にあったのを掴んでいた携帯のディスプレイで確認してみると、今の時間は「AM4:08」と表示されていた。
……通りで眠い訳だ。
昨夜は深夜一時時近くまで撮影があったので、帰って来てベッドに入ったときに見た時計は二時を過ぎていた。そこから計算すると、まだ二時間弱しか寝ていないことになる。急に猛烈な眠気が襲って来て、ふああ、と山本は大きな欠伸をした。
「こんな時間にどうしたの……ていうかとりあえず上がって。狭くて悪いけど」
「おー、悪いな」
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