卒業-3 years after-



「獄寺、こっち、」
掴まれた腕が酷く熱い。
知らない学校で、知らない制服を着る山本は、まるで他人のように見えた。




















長いようで短かった高校生活の最後の日。
日本で2度目の退屈な卒業式の後、最後だから、という理由からかいつもより数倍積極的な女子の波を抜け出し、獄寺はもう二度と顔を出すことはないだろう母校を飛び出した。
校門を潜る直前、目が合った綱吉に頭を下げる。敬愛するボスは笑顔で手を振ってくれた。




獄寺が向かったのは駅2つ向こうにある山本の学校だ。
中学を卒業式して、綱吉と獄寺は近くの公立に、山本は野球推薦で部活動の盛んな私立の男子校に進学した。
あの卒業式の日から、山本と獄寺の関係が何か変わったかと言うと、ほぼ何も変化はない。学校で会うことがなくなった分、お互いの家へ行き来することが増えたくらいだろうか。
山本が自分を好きなことくらい、獄寺はあの日よりもずっと前から気付いていた。だいたいあいつはあからさま過ぎる、と獄寺は思う。
あんな判りやすい視線で獄寺ばかりを追っていて、視線の先にいる本人が気が付かない訳がないのだ。
直接確認したことはないが、いつもその隣りにいた綱吉もきっと気付いているだろう。聡明な彼は、それを敢えて口にすることはなかったが。

けれど、あれだけ判りやすい求愛をしておきながら、告白をした後も山本は慎重だった。
学校が離れた分、お互いの距離が開かないようにと思ってか山本はまめに獄寺へ連絡をするようになったし、部活のない週末はほぼ獄寺の家へ上がり込むか自宅へ獄寺を呼び寄せるようになったけれど、二人きりになっても甘い言葉どころかあの日を思い出させるような台詞すら口にすることはなかった。
お互いの家に泊まりに行くことも、来ることも多々あったが、寝ている間に手を出して来ることなんて全くなかった。
ただただ、視線だけは変わらず獄寺を愛しいと訴えていて。
獄寺は、いつだってそれに安堵していた。



……獄寺もずっと、山本の事が好きだった、ということは誰にも言ったことはない。
中学の卒業式の日、山本から告げられた言葉に涙が出そうになったのは秘密だ。
けれど敢えてはぐらかすような言い方をしたのは、別の高校に通う3年間で、山本の気持ちが変わるかもしれないという不安からだった。
何の進展もない3年間に、あの日のやりとりを後悔したこともなかった訳ではない。
けれど、この3年間山本は出来る限り獄寺の傍にいようとしていたし、何より言葉よりも雄弁な眼差しが途絶えることはなかった。
―――女々しくも人に気を遣っている馬鹿の為に。高校を卒業するこの日に、獄寺は一世一台の決意を決めた。











卒業式で妄想の3年後。まだぐだぐだやってました(笑)
続きます。
(2009.4.19)