risonanzaプレビュー
まだ寒さの残る、春先のことだ。
放課後、部活を終えた山本が忘れ物に気付いて教室に戻ると、誰もいなくなったそこに獄寺だけが残っていた。
獄寺は机に突っ伏したままで、眠っているのか山本が入って来ても微動だにしない。
「ごくでら?」
山本が思わず名前を呼ぶと、ぴくりと肩が揺れ、それから獄寺がゆっくりと顔を上げた。
「ん――……だよ、おまえか」
眠たげな声は山本を認めてあからさまに不機嫌そうな口調に変わる。けれど他の人間が見たら竦み上がりそうな睨みを向けられても、山本にとってはああ眠そうだなぁくらいにしか映らない。
最初からそうだ。
目立つ容姿と隠しもしない物騒なオーラに、周囲の人間は獄寺を不良と決め付けて遠巻きにしていたのだが、山本には彼がどうしても悪い人間には見えなくて。
近付いて、声を掛けてみたら、やっぱり面白い奴だった。
悪振っているのはスタイルだと判ったし、本当は誰よりも真っ直ぐで、誰よりも仲間思いなのを知った。それから、素直じゃないけれど、凄く優しいことも。
内面を知る度に惹かれていって、気付けば好きになっていた。自覚したのは中一の終わり頃。
山本は昔から野球一筋だったから、誰かを好きになったのはこれが初めてだ。今までクラスメイトの男子や女子が、好きな相手のことで一喜一憂して盛り上がっているところを見ても何の興味も沸かなかったが、今なら彼らの気持ちがよく判る。
獄寺が自分を見てくれたら嬉しいし、邪険にされたら悲しい。もっと一緒に居たいし、もっといろんな獄寺を見てみたい。
だから、今獄寺の瞳が、自分だけを映していることがとても嬉しくて。山本の顔は自然と綻ぶ。
「獄寺、こんなところで寝てたら風邪ひくぜ?ツナでも待ってたのか?」
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