NEW YEAR
大晦日、ウチに泊まりに来なよと山本が照れくさそうに誘って来たのはクリスマスの翌日だった。
―――あ、獄寺が年末実家に帰らないなら、だけど…。
山本が思い出したように付け加えたその選択肢は獄寺の中には存在しなかったので(あの家に帰るつもりは毛頭ない)夕飯をご馳走するからという誘いに断る理由もなく頷いた。
山本家で過ごす初めての日本での年越し。
獄寺は初めて『年越し蕎麦』というものを食べて、なんで蕎麦なんだと疑問を口にすればそういえばなんでだろ?と同じく首を傾げる山本に笑って剛が説明してくれる。
それに二人してなるほどと感心していると紅白歌合戦が始まり、今度は『演歌』というものを初めて聞いた。
何となく耳に残って口ずさむと、獄寺演歌上手いねと山本が笑うので気恥ずかしくてぷいと顔を背けた。
そうこうしている内に紅白も終わり、年明けまであと5分。
テレビではカウントダウンの準備が始まっている。何となく3人共口数が減って、テレビに視線が集まる。
あと1分。テレビの中でカウントダウンが始まった。
―――2008年まで、あと60秒!
―――50秒!………40!………30!………20!………
―――10!…9!…8!………
―――…3!…2!…1!
―――ハッピーニューイヤー2008年!!
誰かの掛け声と同時に、パァンと花火が上がった音がした。
した、というのは獄寺は直接見た訳ではないからだ。その瞬間、獄寺の視界を遮るように、山本の顔が覆い被さっていた。
「――――っ……!」
音も立てず、一瞬触れるだけで離れた唇。剛は獄寺達より手前でテレビを見ていたから気付かなかっただろう。上がった花火におお、と小さく声を漏らしてから、獄寺たちの方を振り返った。
「明けましておめでとう、武、獄寺くん」
「明けましておめでとう」
山本はそれにしれっと返して、獄寺に微笑み掛ける。獄寺はと言えば、突然のことにどうにか表情を取り繕って、「…めでとう、ございます」、と小さく返すので精一杯だった。
と、家用の電話が部屋に鳴り響く。
「おっと、」
慌てて立ち上がった剛は受話器を取ると、電話の相手と親しげに挨拶を交わしている。どうやら親戚かららしい。
剛の意識がそちらに行ったのを確認すると、獄寺は隣りの山本を睨み付けた。
「テメ、何のつもり…」
小声で問詰めると、山本はへらりと笑顔を崩す。
「ごくでらの、今年最初のちゅー貰っちゃった」
その顔が心底嬉しそうで、獄寺は一瞬目を奪われた。……こんなにやけた顔がちょっとでも格好良いだなんて。
「ね、もう上いこ?親父あれ始まると長いからさ」
獄寺の返事も待たず山本はせっかちに立ち上がる。
電話中の父親に気遣いもせずおやすみーと声を掛けると、獄寺の手を取って部屋を出た。廊下に出ると冷たい空気が頬を刺す。
その後ろ耳がほんのり赤く染まっていたから、山本も照れていたのだろうか。
獄寺は、繋がれた手をほんの少しだけ握り返す。
「……ンなこと言ったら、今年最後までおまえしかねぇじゃねーか」
「えっ!?」
こそりと呟いた言葉はしっかり山本の耳に届いていたらしい。
ぐるんと勢い良く振り返った山本が、獄寺を思い切り抱き締めた。
「ちょっ…!」
「ごくでら、もいっかい、もっかい言って!」
「馬鹿か!もう言わねぇ!」
「えーケチ。俺は最初っから最後まで獄寺だけだよ」
…今年だけじゃなくて。
耳元に吹き込むように囁いて、そのままキスされた。今年2回目。
今度は啄むように何度か触れて、チュッと音を立てて離れる。
熱い息を吐いて視線を絡ませると、山本は笑っていなかった。
「………?」
獄寺が首を傾げると、山本が困ったように微笑む。
「えーと、折角だから……姫始め、とか」
「……なんだ、『姫始め』って」
「あ、そっか。……じゃあ、早く部屋いこ。実践で教えたげる」
「えっ、ちょ……」
半ば抱え上げられるような格好で山本の部屋に連れて行かれる。
その後実践された『姫始め』に、獄寺は容易な発言をしたことを後悔するがすでに遅かった。
1日過ぎてしまいましたがが年越し妄想。
隼人は日本の文化を山本にたくさん教えて貰うといいと思います!(笑)
「今年最初のちゅー」がテーマでした^^
(2008.1.2)