こいのうたプレビュー



カキーンという小気味良い音と共に、青空に向かって放たれた真っ白いボールに誰もが釘付けになっていたその瞬間。獄寺は、そのボールを打った泥だらけのユニフォームに目を奪われていた。
たった一ヶ月前の黒曜との戦いなんてまるで夢だったような、あの時負った腕の怪我なんて最初から無かったような、晴れやかで自信に満ちた笑顔。
黒曜との戦いの中で、山本は確かに剣士として、マフィアとしての素質を垣間見せていた。少しくらいは腕が立つかもしれないが、あんな奴所詮は平和ボケした日本人だ。とそう決め付けていた獄寺にとって、戦いの中で見せた山本の表情は予想外で、そして何より他人になど興味のなかった獄寺の心を揺り動かした。
こうして日常に戻ってしまえば、あそこにいるのはバットを握るただの野球馬鹿でしかないのに。獄寺の記憶は剣を振る男の姿を鮮明に映し出していて、そのギャップに目が離せなくなる。
「ホームランです!!」
「さすが山本!!すごすぎ!!」
周りに座るハルや綱吉の声が聞こえて、山本を凝視していた獄寺は我に返る。
同じタイミングでガッツポーズを決めながら振り向いた山本が一瞬自分を見たような気がして(実際獄寺の周りには綱吉や他のメンバーも集まっていた訳だから、自分だけを見たのではないと判っているのだが)ずっと見ていたことを気付かれてはいないだろうかと内心焦りながら、獄寺は敢えて悪態を吐いた。
「っ……たく、山本ごときに相手チームは何やってんスかねぇ」














―――実際に気付いたのはもう少し後になってからだけれど、きっかけは間違いなくこの出来事だった。
きっと一生伝えることは無い、伝わることも無い、獄寺隼人の中の秘めた恋の灯火が、灯った瞬間。


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