10代目、



「ボス!!!」



必死の形相でボンゴレファミリーのトップのプライベートルームに駆け込んで来たのは、ボスの右腕である獄寺隼人だ。
力任せに開けられたドアがみしりと悲鳴を上げた。
「獄寺くん、」
部屋の奥で獄寺を迎えたのは現ボンゴレボスである沢田綱吉。
丁度手当をしていた彼の右肩には真っ白な包帯が巻かれている。
「きっ…、傷の具合は、」
「掠っただけだよ。すぐ治るって」
この包帯だって大袈裟なくらいなんだよ、と苦笑する綱吉に、獄寺はくしゃりと顔を歪めた。
「申し訳ありませんっ!!!オレなんかのせいで…!!!」
今にも土下座しそうな勢いで獄寺が頭を下げる。綱吉はやめてよ、と獄寺を宥めた。
「俺からしたら獄寺くんの方が怪我してないかが心配だよ。思い切り突き飛ばしちゃったから…大丈夫?」
「オレは全然っ…!掠り傷ひとつないです!!」
「そう。良かった」
そう言って心底安心したように微笑む綱吉に、獄寺は眉間を寄せる。
「…ボス。あなたはご自分の身の安全だけを考えて下さい。いち部下のためにあなたが身を呈してはいけません」
「………ごめん」
確かに、思い返してみればあのときの自分の行動は軽率だったと綱吉も認めざるを得ない。

キャバッローネファミリーの屋敷を訪れた帰り、車に乗り込もうとしたところを銃撃されたのは予想の範疇だった筈だ。
いくら同盟ファミリーの敷地前だからといって、100%安全とは言い切れないことくらい判っていた。
その為に護衛として獄寺を連れて行ったのに、銃撃が獄寺の頬のすぐ真横を掠めた瞬間、身体が勝手に動いてしまったのだ。

『獄寺くっ…、!!』

目の前に立っていた獄寺を咄嗟に突き飛ばす。
丁度そのとき獄寺を狙って放たれた弾丸が、綱吉の右肩をほんの少し(医者は傷口を見て眉を顰めたが、綱吉にとっては掠り傷だった)抉ったのだった。
その後、騒ぎを聞き付けたキャバッローネの部下達が応戦に駆け付けてくれ、すぐに敵は身柄を拘束された。
ディーノと獄寺の間で捕らえた者達について何かやりとりをしていたようだが、専属医のいるボンゴレの屋敷へ一足先に帰った綱吉は、彼らがその後どうなったのか知らない。

―――そして、治療を終えた医師が部屋を辞したところに丁度獄寺が駆け込んで来た、という訳だ。
まだ何か言いたげに綱吉を見下ろす獄寺に手を差し出す。座って、と言わなくても獄寺は従順にベッドサイドへ腰を掛けた。
「ごめんね。獄寺くんは強いし、ちゃんと信頼してる。けど、頭では判ってても駄目なんだ」
腰を下ろすと少しだけ綱吉の方が目線が高い。出会った頃は見上げていた緑の瞳を、真っ直ぐに見詰める。
「だって、好きな子を護りたいって思うのは男だったら当然だろ?」
「……!」
緑の瞳が見開かれる。惚けたようなその表情は、子供の頃から変わっていない。
「じゅ……だいめぇ、」
やがてその顔がくしゃりと歪んだ。今にも泣き出しそうな獄寺のこめかみに、綱吉は口付ける。
「俺にもたまにはかっこいいとこ作らせてよ」
ね?と微笑んでみせると、獄寺は目尻に涙を溜めながら笑った。

「10代目はいつだって、誰よりも格好良いですよ」










お友達への貢物。
ツナ獄ってツナは隼人に甘くて、隼人もツナに甘いとってもデレデレなCPだと思います(笑)
因みに隼人は人前では「ボス」2人きりだと「10代目」と呼んでるといいなぁ。
(2007.9.18)